
近年、家族の形や価値観の変化に伴い、直葬という形式の葬儀を選択する人が増えています。直葬には、費用面などのメリットもある一方で注意すべきデメリットも存在し、後悔する場合もあります。この記事では、理想の葬儀を行うために直葬のメリット・デメリットから後悔しやすいポイントまで詳しく解説するので、ぜひご一読ください。
直葬とは?
直葬は通夜・告別式を行わず、火葬のみで故人を送る葬儀の形式です。正式には「火葬式」と呼ばれることもあり「ちょくそう」または「じきそう」と読みます。2000年頃から使われるようになった比較的新しい葬儀の形態で、近年は選択する人が増えている傾向にあります。一般葬では通夜・告別式・火葬の3段階を2日間かけて行うのに対し、直葬は火葬場での短時間のお別れのみとなります。参列者数も一般葬の50~100名に対し、直葬は家族や親族など10名以下の少人数が基本となっています。
費用面では一般葬が100万円以上かかるところ、直葬は20~50万円程度と大幅に抑えられるのが特徴です。直葬が選ばれる背景には、少子高齢化による家族構成の変化、核家族化の進行、経済的負担への配慮があります。
また、故人の生前の意向として「簡素な葬儀を希望する」ケースや、コロナ禍による密を避けたい事情も影響しています。
さらに従来の慣習にとらわれない価値観の多様化により、形式よりも心を重視する考え方が広まっていることも要因の一つです。都市部を中心に直葬を選択する割合は年々増加しており、葬儀の新しいスタンダードとして定着しつつあります。
直葬のメリットとデメリット
直葬には費用面や時間の融通、遺族の負担軽減といったメリットがある一方、納骨の問題や親族間トラブルなど後悔につながりやすいデメリットも存在します。検討する際は両方の側面を幅広く理解し、慎重に判断することが重要です。直葬のメリット
最大のメリットは費用を大幅に抑えられることです。一般的な葬儀が100万円以上かかるのに対し、直葬は平均40万円程度で済みます。会場使用料、祭壇費、接待費用、返礼品代、会葬礼状印刷代などが不要となるためです。また、参列者が少ないため香典返しも最小限で済み、経済的負担を大幅に軽減できます。時間的な融通が利く点も大きなメリットで、火葬場の予約が取りやすく、通夜・告別式の準備期間が不要なため、死亡から火葬までの期間を短縮可能です。
遺族の精神的・身体的負担も軽減され、弔問客への対応や接待の準備、多数の参列者との挨拶回りが不要になります。高齢の親族にとって長時間の式への参列は体力的に負担となるため、短時間で済む直葬は参列者への配慮にもなるのです。
宗教的儀式がないため、特定の宗派に縛られることなく故人を送ることができ、宗教観の違いによるトラブルも回避できます。
直葬のデメリット
最も大きなデメリットは故人との十分なお別れの時間が取れないことです。火葬炉前での短時間のお別れだけでは、気持ちの整理がつかない場合があります。参列者を限定するため、故人と親しかった方が参列できず、後日自宅への弔問が続く可能性もあります。菩提寺との関係悪化も懸念材料で、宗教的儀式を行わなかったことで納骨を断られるケースも珍しくありません。また、家族や親族の理解を得られず、トラブルに発展する場合もあります。
とくに高齢の親族は伝統的な葬儀を重視する傾向があり、簡素すぎる送り方に反対される可能性が高いです。また、供養した実感を得られず、後になって「もっとしっかりと送ってあげたかった」と後悔する遺族も少なくありません。社会的な体面を気にする方にとって、直葬は不十分と感じられる場合もあります。
直葬で感じる後悔とその対策
直葬で最も多い後悔は「故人を十分に送れなかった」という気持ちです。ある遺族は「火葬炉前での5分程度のお別れでは心の整理がつかず、もっと時間をかけて送ってあげたかった」と後悔を語っています。また、親族からの反発により関係が悪化したケースでは「事前に相談せずに直葬を決めたため、親戚から『冷たい』『非常識』と批判された」という経験談があります。生前の意思確認不足による後悔も多く「本当に故人が直葬を望んでいたのか分からず、罪悪感を抱いている」という声も聞かれます。
お金の問題では「安さだけで選んだが、結果的に心残りが多く、費用をかけてでも通常の葬儀にすべきだった」という後悔も少なくありません。対策として、自宅での納棺時にゆっくりとお別れの時間を設けたり、後日お別れ会や偲ぶ会を開催したりする方法があります。
親族との関係悪化を防ぐには、事前に直葬を選ぶ理由をていねいに説明し、理解を得ることが重要です。故人の生前の意向があればそれを明確に伝え、経済的事情がある場合は正直に話すことで納得を得やすくなります。菩提寺との問題については、直葬を行う前に必ず相談し、今後の関係について話し合っておくことが不可欠です。